小川町・霜里農場見学


小川のお野菜と地ビールを堪能したあとは、その小川町で40年以上前から有機農業に取り組み、国内外から多くの研修生を受け入れて有機農業の普及にも貢献されている金子美登さんの霜里農場を見学させていただきました。この農場、TV「プロフェッショナル仕事の流儀」で取り上げられてから、見学希望者が殺到しており、見学も数ヶ月待ちなのだとか。
ガイドはコーディネータのNPO法人生活工房つばさ・游の高橋優子さん。高橋さんは霜里農場を「食とエネルギーの循環のモデル」と言います。化学肥料や農薬を使わない農業を実践しているだけでなく、農場で使う機械や生活に鉱物燃料を使わず、地域資源自然エネルギーを活用してエネルギーを自給している資源循環型農場でもあります。

[母屋]
金子さん所有の山の木を切り出してつくられています。外壁が黒いのは、防腐剤としてぬってある柿渋です。電気は太陽光発電、暖房やお風呂のお湯などはウッドボイラ―で賄われています。

[SVO]

SVOはStraight Vegitable Oilの略です。日本の食糧自給率はカロリーベースで36%と言われています。しかし、多くの農家は石油からできている燃料で動く機械を使っているので、もし石油が使えなくなったら、農産物をつくれなくなり、自給率は0%に近くなるという説も。霜里農場では、農機具や車にはガソリンを使わず、町の豆腐屋さんで油揚げをあげるのに使われた廃物油を遠心分離機にかけたものを使います。もちろん遠心分離機も太陽電池で動かしています。

写真の車はメルセデスベンツ。これもSVOで動いています。ドイツ車は植物性のディーゼル対応ができているので、SVO対応させやすいのだとか。

[バイオガス]
おからや生ごみ、家畜のふん尿などを、地中に埋め込まれたドームの中で嫌気発酵させると、メタンガスと中性の液肥ができます。ガスはお湯をわかしたりするのに使い、液肥は農場で肥料として使われます。収穫祭の準備で出た生ごみもさっそくドームの中に投入させていただきました。

バイオガスのドームの下には、太陽の熱で沸かされたお湯が引き込まれており、発酵を促進しているのだそうです。

[ガラス温室]
ビニールの温室は劣化が激しく、ビニールのかけ替えでゴミが発生します。このガラス温室は母屋と同じ山の木を使い、建築廃材のガラスを使って作られたもの。20年はもつそうです。

[種の保管庫]
多くの農家では野菜の種を種苗会社から購入しますが、金子さんは農場でつくる種を自家採取しています。また、地域内での種の交換会などを通して地元の固有種を守る活動もしています。

[少量多品種とコンパニオンプランツ]
霜里農場では年間60品目の野菜をつくっています。ひと畝ずつ異なる種類の野菜をつくっていますが、これはコンパニオンプランツの組み合わせなのだそうです。
ある野菜の害虫が嫌う科の野菜をとなりで育てることで、害虫を防いでいるのだとか。また、同じ畝に同じ科の野菜を連続して作らないようにずらして、土の栄養状態が偏らない工夫もされているそうです。

たとえば、いちごを栽培するときの例。いちごは、甘い香りに虫がよってくるため、果実を無農薬で作るのは特に難しい作物です。
そこで霜里農場ではイチゴ畑の脇に大麦を植えています。大麦に寄ってくる害虫を食べる益虫が、ついでにイチゴにつく害虫も食べてくれるのだとか。害虫防止ではなく、益虫を呼び寄せるためのコンパニオンプランツもあるのですね。また、イチゴの隣にはカマキリの卵が刺さっています。害虫を食べてくれるカマキリをあえてここに連れてきました。
イチゴ畑には日本ミツバチの巣箱が置いてあります。多くの野菜や果実はミツバチによる受粉なしでは実らないのですが、ここ数年、世界的にミツバチが大量にいなくなっている状況に危機感を感じ、霜里農場でもミツバチの育成を行っています。

[牛・鶏小屋]
牛は畑のまわりの雑草を食べてくれる心強い仲間。毎日少しずつ移動させながら飼っています。まわりの柵には太陽光発電した電気が通っています。触るとビリッビリッと電気を感じます。

多くの見学者が「牛や鶏小屋が臭くない!」と驚きました。一般的な鶏は抗生物質の入った餌を食べるため、フンが湿っていて、腐敗するのですが、霜里農場の鶏たちは自然の餌を食べているので、フンが乾いているし、堆肥づくりに使われて熟成されるそうです。

エネルギーの循環を、知恵と工夫で実践している霧里農場。
ここでは、長年の努力と高度な技術の積み上げの上に、さらに新たな工夫や実験が日々繰り返されています。
農業のダイナミズム、高度な知の集積が感じられました。


参加者の方からは「ものすごく勉強になった」との声をたくさんいただきました。農場見学のあとはバスに乗り、小川の野菜直売所に寄ったり、紅葉をたのしみながら、湯郷玉川温泉へ。冷えた体が温まったら、バスの中で小川の地ビールの酒盛りが自然発生していました。なんと贅沢な時間でしょう!

また来年以降も、この体験をたくさんの人と共に分かち合いたいと感じました。
松永さん、高橋さん、霜里農場さん、この1年間本当にありがとうございました。